PC-9821(ピーシーキュウハチニイイチ)とは、1992年に日本電気(NEC)が発表したパソコン、およびその系列の名称のことです。長く日本市場を支えてきたPC-9800シリーズを、Windowsやマルチメディアの時代に合わせて発展させた機種にあたります。
現実世界に例えると、PC-9821は時代の変化に合わせて改装を重ねた老舗のようなものです。長年の常連客を大切にしながら、新しい設備を取り入れていきました。その努力は実を結びますが、やがて大きな流れには抗えなくなります。
初代機「98MULTi」
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表 | 1992年10月 |
| 愛称 | 98MULTi(キュウハチマルチ) |
| CPU | Intel 386SX/20MHz |
| 画面 | 640×480ドット/256色 |
| 特徴 | CD-ROMドライブを標準で搭載 |
それまでのPC-9801が8色や16色だったのに対し、256色の表示とCD-ROMを備えた点が、この機種の新しさでした。
三つの系統に分かれる
翌1993年から、用途に応じた三つの系統が用意されます。CD-ROMなど趣味の機能を備えた「98MULTi」、Windowsを快適に使える性能の「98MATE」、価格を抑えてMS-DOS利用者に向けた「98FELLOW」という並びです。
Windowsへの対応
PC-9821が登場した時期は、MS-DOSからWindowsへの移行が始まったころにあたります。画面の表示能力や音の機能を高めたのは、Windowsとマルチメディアの利用を見据えてのことでした。
PC-9801との関係
PC-9821はPC-9801を置き換えたわけではなく、しばらくは両方が並行して販売されていました。従来のソフトを動かせる互換性を保ちながら、新しい機能を積み増していく形が取られています。
独自規格の終わり
やがて、世界共通の設計であるPC/AT互換機が日本語を問題なく扱えるようになります。Windowsが機種ごとの違いを吸収してくれるようになったことで、独自規格を選ぶ理由そのものが薄れていきました。安価な海外製パソコンが流れ込み、98シリーズは主役の座を譲ることになります。
長く残った現場
販売が終わった後も、98シリーズ向けに作られた業務システムや工場の制御装置は、各地で使われ続けました。動いているものを止められず、部品の入手にも苦労する。そうした置き換えの難しさは、後々まで課題として語られています。
型番が分かりにくかった
PC-9821は非常に多くの機種が発売されました。愛称と型番、末尾の記号が入り組んでいて、どれがどの世代なのか見分けにくいという声も当時からありました。中古で探すときに苦労するところでもあります。

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