クラウドルーター(Cloud Router)とは、クラウド上のネットワークと社内などの外部ネットワークとの間で、経路の情報を自動でやり取りする仕組みのことです。どこへ行くにはどちらへ進めばよいかという道案内の表を、人が書き換えなくても最新の状態に保ってくれます。
現実世界に例えると、クラウドルーターは互いの地図を突き合わせて更新し合う案内係のようなものです。相手の敷地に新しい建物が建てば、その情報が自然と伝わってきます。案内板を一枚ずつ書き直して回る必要がありません。
手で書く経路との違い
| 項目 | 手で書く(静的) | クラウドルーター |
|---|---|---|
| 経路の追加 | 人が書き足す | 自動で伝わる |
| 障害のとき | 人が切り替える | 自動で切り替わる |
| 向く規模 | 小さく変化が少ない | 拠点が多く変化する |
| 必要な知識 | 少なくて済む | BGPの理解が要る |
経路をやり取りする作法「BGP」
中核にあるのはBGPという取り決めです。もともとはインターネット全体で、事業者どうしが「うちの先にはこの範囲がある」と教え合うために使われてきた仕組みで、これをクラウドと社内ネットワークの間へ持ち込んだ形になります。クラウドルーターは、この会話をクラウド側で代わりに行う役目を負います。
何が自動になるのか
手作業との違いは、変化への追随です。社内で新しいネットワークを増やしたとき、従来はクラウド側の経路表にも同じ内容を書き足す必要がありました。BGPでつないでおけば、増えた範囲は自動で相手側へ伝わります。書き忘れによる「一部だけつながらない」という事故を防げます。
単体では使わない
クラウドルーターそのものは、通信を運ぶ装置ではありません。VPNや専用線といった、実際に通信を通す経路と組み合わせて初めて意味を持ちます。運んでいるのは通信の中身ではなく経路の情報だけ、と捉えると役割がはっきりします。道そのものではなく、道案内の担当だと考えてください。
障害のときに経路が切り替わる
複数の経路を用意しておくと、真価が出ます。使っていた経路に不具合が起きると、その経路の知らせが止まり、残っている経路へ自動で流れが移ります。人が異常に気づいて設定を書き換えるまで通信が止まったままになる、という事態を避けられるのが利点です。
VPCルーターとは別物
名前が似ているため混同されがちですが、役割は異なります。VPCルーターはネットワークの出入口そのもので、通信を実際に通す設備です。一方クラウドルーターは、経路の情報を交換する裏方にあたります。門と地図係。並べて考えると、違いが分かりやすくなります。
事業者によって呼び名が違う
「クラウドルーター」という名称は、Google Cloudの「Cloud Router」がよく知られています。同じ働きを、AWSでは仮想プライベートゲートウェイやTransit Gatewayが担い、Azureでは仮想ネットワークゲートウェイが受け持ちます。名前は違っても、BGPで経路を交換するという中身は共通です。
設定でつまずきやすいところ
導入時は、両側でAS番号と接続相手の設定を合わせる必要があり、ここが食い違うと経路の交換がそもそも始まりません。また、受け取れる経路の数には上限があるため、社内のネットワークが細かく分かれている場合は、まとめて知らせる工夫が必要になることもあります。

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