VPCルーター(VPC Router)

VPCルーター(VPC Router)とは、クラウド上に作った自分専用のネットワークの出入口を担う、仮想のルーターのことです。手で触れる機械ではなく、クラウドの中でソフトウェアとして動きます。

現実世界に例えると、VPCルーターは門と守衛室を兼ねた設備のようなものです。外との行き来はすべてここを通り、誰を通すか、どの建物へ案内するかをここで決めます。塀の中に並ぶ建物は、この門があって初めて外の世界とつながります。

VPCルーター図解

VPCルーター図解

物理のルーターとの違い

項目 物理のルーター VPCルーター
機械として存在する ソフトウェアとして動く
用意する時間 調達と設置が必要 数分で作れる
性能の変更 買い替えが要る 種類を選び直せる
費用 購入と保守 使った期間に応じて

前提となる「VPC」

VPCとはVirtual Private Cloudの略で、他の利用者と共用しているクラウドの設備の中に、自分だけが使う仕切られたネットワークを切り出したものです。同じ設備の上にありながら、他人の通信と混ざることはありません。この仕切られた区画へ、出入口として据えるのがVPCルーターです。

一台でいくつもの役目を兼ねる

担う働きは幅広くあります。外との境目で通信を選り分けるファイアウォール、外から来た通信を内側のサーバーへ振り分けるポートフォワーディング、内側の機器へアドレスを配るDHCP、そして拠点や個人とつなぐVPN。物理の世界で何台かに分かれていた機能が、一つの仮想機器にまとまっています。

VPNの入口として使われる

もっとも多い使い道がこれです。会社の事務所とクラウドをIPsecでつないだり、社員のパソコンから直接つないだりすることで、インターネットに公開したくないサーバーも安全に扱えます。公開しないまま社内からだけ使える状態を作れるのが、大きな利点になります。

さくらのクラウドでの扱い

日本では、さくらのクラウドが提供する仮想アプライアンスの名称として広く知られています。ただし同社では2025年9月に「VPNルータ」へ名称が改められました。役割の中心がVPNにあることを分かりやすくしたもので、機能そのものが入れ替わったわけではありません。

止まったときの備え

出入口が一つということは、そこが止まればネットワーク全体が外と切り離されるということでもあります。そのため、二台一組で動かし、片方に不具合が起きたらもう片方が引き継ぐ構成が用意されています。業務で使うのであれば、この冗長構成を前提に考えるのが安全です。

大手クラウドでは呼び方が違う

用語としてややこしいのはこの点です。AWSやGoogle Cloudでは、これにあたる働きがインターネットゲートウェイ、NATゲートウェイ、VPNゲートウェイなどに分かれており、一つの製品にまとまってはいません。同じことを実現するにも、組み立て方は事業者ごとに異なります。

使う前に押さえておきたい点

導入時につまずきやすいのは性能と費用です。仮想の機器である以上、通せる通信量には上限があり、規模に応じた種類を選ぶ必要があります。また、動かしている間は課金が続くため、試しに作ったまま放置しないよう気をつけてください。使わないものは止めるのが基本です。

あわせて知っておきたい用語

  • VPC
    クラウド上に切り出した、自分専用のネットワークです。
  • ルーター
    ネットワーク同士をつなぎ、通信を中継する機器です。
  • VPN
    公衆回線上に、専用線のような安全な経路を作る技術です。
  • ファイアウォール
    通してよい通信だけを選り分ける仕組みです。

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